test

新時代の観光バス ― 「足」の役割から「需要創出」を期待

2014年6月21日
編集部

 家で何も読むものがないときには、地図帳を眺めている。愛用の地図帳には、ほぼすべての温泉地が目立つように記されているし、フェリーの航路も描かれているので、ぼんやりと眺めているだけで楽しい。田舎道を走るドライブ旅行が好きな私は、地図上の道を目で辿りながら、まだ行ったことのない温泉地に思いを馳せたり、「街道沿いに美味しいレストランがあるかな?」「こんな小さな漁港の町で1週間くらい魚を釣ったり、名もない居酒屋でお酒を飲んだり、ゆっくりとしたいなぁ」などと夢想する。何も予定のない、とある休日、ハムとキュウリを挟み、マスタードをたっぷり塗り込んだ辛めのサンドイッチをつまみに、スコッチをちびちび飲みながら例の地図帳を眺めていると、「またどこかに行こうと企んでいる?」と妻に聞かれた。「その通りなのだ」と心の中で答えるが、昨今の異常なガソリン代高騰の折り、顔色を窺いながら、「それはどうかわからんがね」とうやむやにして呟く日々が続く。

 クルマ旅とガソリンスタンドの関係は密接であり、旅の重要な「一コマ」でもある。しかし、そのガソリンスタンドが旅先で姿を消しているのを強く感じる。燃費性能の悪いクルマなので、高速道路を降りたあと、小さな町のガソリンスタンドを通り過ごして峠道などに入ってしまうと、急に心細くなる。燃料計の残量ばかり気にしながら、美しい風景も一切目に入らない状態になってしまう。

 実際、データ上でもガソリンスタンドは確実に減少を続けている。経済産業省資源エネルギー庁によると、1997年以降は毎年1千カ所を超えるガソリンスタンドが消滅している。また、地域にガソリンスタンドが3カ所以下の自治体は全国で265市町村もあるという。

 帝国データバンクはこのほど、ガソリンスタンド経営業者の倒産、休廃業・解散動向調査を実施した。ガソリンスタンドの経営者のうち、「約8割(79・6%)が60歳以上」と、高齢化と後継者難もあって、今後さらに倒産や休廃業などによる「ガソリンスタンドの過疎地拡大」を懸念している。

 交流人口の拡大が地域を生かす。その地域が、旅行者を受け入れるために欠かせない旅館やガソリンスタンドがどんどん姿を消しているのが観光立国を目指す国の現状だ。

 今後の日本の観光を考えると、「高齢化」と「外国人旅行者の増加」が大きなポイントとなる。東京など大都市部は交通網が整備され、「足」に関しては高齢者や外国人に対しても、かなりの部分で対応できる能力を有している。問題はやはり地方部である。2次交通が整備されていないエリアを、高齢者や初めて訪れる外国人旅行者が旅する場合には、バスやタクシー、マイカーやレンタカーなどクルマによる移動の方が楽である。

 団体旅行から個人旅行へと旅行形態の主流が移り変わるなかで、観光バスも厳しい時代が続いている。しかし、高齢者と外国人観光客が拡大する新時代の市場においては、需要は確実にある。観光の「足」としての役割が主だったバス会社だが、今後バス会社がイニシアチブをとって、観光振興による地域活性化に大きな貢献をしていく可能性を感じる。ユニバーサルツーリズムの観点から、新たな需要を創出していくことを期待している。

(編集長・増田 剛)

いいね・フォローして最新記事をチェック

PAGE
TOP

旅行新聞ホームページ掲載の記事・写真などのコンテンツ、出版物等の著作物の無断転載を禁じます。