test

「観光ルネサンスの現場から~時代を先駆ける観光地づくり~(200)」 日本一の寒冷都市の新たな挑戦(北海道名寄市)

2021年9月26日
編集部:長谷川 貴人

2021年9月26日(日) 配信

名寄市立天文台「北スバル」

 各地の「現場」を訪ねる本稿も200回目を迎えた。だが、まだまだ未踏の地域は数多くある。北海道名寄市もその1つである。市が見直しを進める観光振興計画の策定(第2次)委員会にお招きいただき、ご縁をいただいた。

 名寄市は、北海道の真ん中、旭川市の先にある、人口3万人弱の「道北」の中心都市である。しかし、必ずしも便利な地域とは言えない。東京からは旭川空港が起点となる。リムジンバスで旭川駅に出て、1日数往復のJR列車に乗り換える。旭川からは快速電車で約1時間だが、残念ながら空港からのバスと鉄道の接続が悪く、思ったより時間が掛かってしまう。

 旭山動物園などフックになる著名な資源がある旭川と比べると、名寄では「わざわざ訪ねる」魅力づくりが不可欠。「ここでしかできない体験」や他の地域にはない魅力を発見し、人々が訪れる仕組みをつくることが今回の事業の核になろう。

 では、名寄の魅力とは何か。実際に現地を訪ねてみて、その資源の豊かさに驚いた。

 名寄は「日本一の寒冷都市」と言われる。1月の最低気温はマイナス9.4度だが、1982年の厳冬期にはマイナス35.7度を記録した。気温が低いときに空気中の水蒸気が凍ってできるダイヤモンドダストや、太陽の光が反射して氷の柱のように見えるサンピラー(太陽柱)現象にワクワクした。市街を見下ろすサンピラーパークの丘には、名寄市立天文台「北スバル」がある。国内2番目に大きいピリカ望遠鏡が圧巻だ。この「気候資源」により、スキーやジャンプ台、カーリングなど、冬季スポーツが盛んである。

 「日本一の寒冷都市」と言えば、新潟県十日町市の「究極の雪国」(日本遺産)物語を連想する。信濃川河川敷の縄文中期の集落から発掘された国宝火焔型土器、豪雪による固有の植生(原料の苧麻)や雪晒し(漂白)が、この地の繊維産業を産んだ。北の大地にもこうした数多くの物語が描けそうである。

フィッシング愛好家の聖地・天塩川

 ガイドの鈴木邦輝さんに、名寄のシンボル、九度山とピヤシリ山の地形からアイヌ時代からの集落形成やこの地での人々の暮らしの原点を紐解いていただいた。観光ガイドブック「ブラ・なよろ」は地域物語の宝庫である。天塩川でフィッシングガイドを営む千葉貴彦さんは、名寄とカナダを拠点に、海外ファンとの濃密なネットワークをもとにフルアテンドのガイドを行っている。

 どの地域も長い年月を掛けて形成されてきた地域固有の地形・景観があり、これらがその土地特有の産業や文化、暮らしを生み出してきた。これらをどう読み解くか。そして重要なことは、これら資源と物語を生かす人と仕組みづくりである。優れた資源があっても、これを生かす仕組みと人がなければ観光にはならない。名寄の新しい観光ビジョンの方向性の1つはこの点であろう。

(日本観光振興協会総合研究所顧問 丁野 朗)

いいね・フォローして最新記事をチェック

コメント受付中
この記事への意見や感想をどうぞ!

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

PAGE
TOP

旅行新聞ホームページ掲載の記事・写真などのコンテンツ、出版物等の著作物の無断転載を禁じます。