LINKED CITYの全容に迫る③ ホテル軸に まちづくりを拡張
2021年10月6日(水) 配信
国際観光施設協会(鈴木裕会長)の旅館観光地分科会(川村晃一郎分科会長)は今年3月、観光型スマートシティ「LINKED CITY」構築に向け研究会を発足した。地域資源とAI、IoTデジタルオープンプラットフォームによる事業インキュベーションで雇用を創出。都市と地域、地域と地域をつなげることで分散型社会の構築を実現させることが狙い。
今回はITやIoTを活用することによって人と人、人とまちを結び付けることでの「長期滞在の実現」や、「ホテルが軸となる、拡張したまちづくり」に迫る。
光成・最初に、「LINKED CITY」の入口となる研究「町じゅう旅館・ホテル」構想の進捗状況から報告します。
我われが進める「町じゅう旅館・ホテル」構想は、AIやIoTを活用し、業務負担を軽減することで「業務リソースの再配置」を目指しています。従業員がまちを案内するガイドとなり、地元の素晴らしい景観や、その土地ならではの体験ができる施設など、旅行者が自分で検索しても見つけることができないディープな情報を発信する。こうした付加価値をつけることで宿泊単価が上がるだけではなく、飲食店や土産物屋を含めた地域内での人の流れも創出できれば滞在時間は自然と伸びていきますし、住民とのコミュニケーションが生まれることで再訪意欲も喚起できると思います。
理想を実現させるためには、AIとIoTのソリューションの開発も大切です。例えば、客室のテレビや、ロビーのサイネージを通し、「地域情報」を発信することができます。またその情報に映し出されるQRコードを通じてMaaSと連動させることで移動のためのルート案内やクーポンの配布などを行うことができます。ほかに、ジョルテのイベントカレンダーを通じて、イベント情報を発信できます。
空山 ・「LINKED CITY」に参画している企業が保有するソリューションを組み合わせることで、さまざまなアイデアをカタチにしやすいです。
だからこそ、「目的」が重要になります。「目的」によってアプローチは変わるので、「LINKED CITY」を導入する市町村ごとにコンセプトも当然違っていていいと思っています。
各地域の魅力を発信することに関しては、魅力的だと思っている場所に「なぜ行かれないのか」を考える必要もあります。東京都内に住んでいる人がいくら魅力的だからといってすぐに北海道の帯広に行くことは、費用面や日程などさまざまな理由から難しいと思います。こういった人に対しては、まず神奈川県の箱根など近い場所を旅行し、今まで気が付いていなかった魅力に気が付いてもらう。そこから徐々に距離を伸ばしていけるようにしたらいいのではないでしょうか。
川村・ハードがあっても中身がなければ意味がないですよね。例えば、ソニーのテレビがあっても、映像や、人と人、人とまちがつながるためのコンテンツがないと地域の活性化の役には立ちません。
また、その映像やコンテンツは、地元の人が創らないと意味がないと思います。我われは手段を提供することはできますが、本気でやろうという人がいない限りそのコンテンツの価値は生まれません。この部分を自治体やホテル・旅館などと一緒にやっていきたいと思っています。
光成・同様に大切なのは、地域情報の発信や動画の制作は、地域の人が主体的に行うこと。動画の制作は、地域のクリエイターに依頼する以外に、地域でクリエイターを目指す学生にも参加してもらうことで、新たな人材を育成していきたい。
ロビーのサイネージで見られる地域カレンダーの情報も、簡単にテキストや写真を編集できるようにします。これによって、地域の飲食店のコアな情報なども発信ができ、滞在時間を延ばすことにつなげられればと考えています。
もう1つ、人と人のコミュニケーションの創造も大切なので、宿泊客やまちの人が撮った写真を宿泊施設の客室のテレビで共有する仕組みなども導入できたら面白いと思います。
空山・地域の人が発想したモノを実現できる環境を我われで整え、挑戦したい人を支援していきたいですね。